ゲド戦記 全5巻
byアーシュラ K=ル グイン (1928? )
(清水真砂子訳)岩波書店

これいいなぁ、読み出すと止まらない。
児童書ってのもあるんだろうけど、気持ちいい位サクサク読めます。
最初から流れに乗れる本てのはやっぱり気持ちいいねぇ。
そういえば、この本は暗いっていう人もいるけど、そうは思わないぞ。
光溢れる海原の描写や緑の森と、重要なの舞台の迷宮や死者の国が対比されてそう思うんじゃないかなぁ?
まぁ、明るい死者の国ってのも……ないだろうしねぇ^^;

さてこの話は、全ての存在が名前の他に「真実の名」を持つ多島海世界アースシー、そこに生きるハイタカ(真実の名前はゲド)と呼ばれる少年が偉大な魔法使いへ成長して全き世界を取り戻したあと、燃え尽きたただのジー様になってしまう冒険の物語。
タイトルからは軍隊同士が戦う戦記物のの用に見えるけど、あくまでも個人のお話、そのつど中心人物は替わるけど、ハイタカとは深い縁で結ばれた人たちのお話だ。
とにかくアースシー世界の全体像ってのがしっかり作り込まれてる、だから僕達はハイタカの目を通してその世界を見て回るのが心地いいわけだけど、その感じは中世ヨーロッパ、特にキリスト教入植以前の古エッダの世界を思わせます。
美しい自然の風景や厳しい自然にさらされる人間達、一般庶民の穏やかな信頼関係ときらびやかな都市にうずまく権謀術策、そしてどの巻でも登場する、作者のかわりにフェミニズム的な物言いをする人間的魅力にあふれた女性達。
そう、登場人物の魅力は忘れちゃいけないね。
ハイタカを取り巻く人々の父親的な深さや母親的包容力、無私の友情や献身的な愛情。
迷信や偏見に惑わされる一般人、欲望に凝り固まった悪党達、際立った個性のかれらが網の目のように関係しあってお話は動いていきます。
特殊な才能を持った田舎のクソガキが苦しみながら成長していく、そのためには彼等との濃い関係が必要なわけですよ。

さらに、この物語は全5冊が約30年('68?'01)かかって書き上げられています、登場人物の成長もさることながら、作者の成熟('05には喜寿)というのも見どころの一つではないかと思っております、自分としてはあの年になったときどんな自分になっているか……ただのエロじじいでなければいいんだが(汗
追記;原典は、民間の学者でだった作者の父親が、生前作ったアメリカ先住民の生き残りに対する聞き取り調査メモです、父親没後その妻(大学教授)がメモをまとめて発表し、それとは別にその娘が希代のファンタジーとして織り上げました。
ファンタジーといえば、「指輪物語」「ナルニア国物語」そしてこの「ゲド戦記」が有名ですが、
先の2点がイギリスの大学教授(男)による、それぞれの研究テーマの延長上のもので、書かれたのも同時期なのに対して、これは少し後にエンタテイメントとして書かれたものです、共通点としてはとても内省的です、ただし「指」と「ナル」は自分の内面の葛藤やカトリックの価値観が大きく影響しているのにたいして、ゲド戦記はアメリカ先住民の思想(全ての事象は因果律の編み目でつながっている)にそって自分自身がもっと大きなものの一部であり、個の内面(特に生と死、個人の抱える善と悪)が外の世界とのかかわり合いで語られます。
ちなみに、「指」の映画の成功に刺激されて「ナル」もディズニーがすでにニュージーランドで製作をはじめてるらしいです、つぎはきっとこれだなんて思ってたら、TVシリーズ「アースシー」としてすでに予定されてるようですね、これが当たれば映画化もされるでしょう。
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