水滸伝 全19巻 北方謙三著 集英社 ?31,600-
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北方謙三の書く男の群像物語。
コレが面白くないはずが無い!
読んでみたら案の定ですわ、泣けること泣けること、志のために死に行く男達と後に残った男達、見事な死に際と無情な運命。
やっぱ北方ワールドだね^^

あちこちで解説されてると思うんだけど、いくつか特徴が有ります。
まずは列伝形式のオリジナルに、時間軸を与えて個々のエピソードに横のつながりを与えた事。
これによって、死んでゆく男達を思い出として語る必然と、後進に道をあたえる伝統のような物が出来上がる。
次ぎに、清蓮寺という明確な敵役を作った事、この強力な諜報機関の存在によって、腐敗しきった国家にちゃんと戦い続ける力をあたえたこと。
それとリアリズムの追求のため、道術とか法術さらに易学のような、オカルトを排除した事。
本来は政治から戦争まで、あまねく易学の上になり立っているはずです、だから、一丈青扈三娘は日月二振りの宝剣を打ち合わせて黒雲と雷を呼び寄せたりはしません。
もうひとつ、リアリズムといえば、しつこいくらいに兵站(軍資金、武器、食料の調達と輸送)が語られる。
たしかに、万単位の人間が数カ月生活するんだから、食事もそうだが、兵士の性欲処理とかトイレの心配まで切実ですよね。

でもそんな能書きは、すっぱりわすれても「北方ブランド」のハードボイルド武強小説、感情移入の嵐にオイラすっかり完敗です。
さすがに、2か月半かかりました、全部読むのに。
もう終わるのがもったいないってかんじですわ。
それぞれ個性的なキャラクター……なんですが、少し前に読んだ三国志とキャラかぶってるよね、とくに宋江と劉備、地味な所がそっくりですW

ところで、元のお話で不思議だったのが、トラブルメーカー(武侠ものでは定番で、お話を面白くして、新しい展開を促す重要な役回り)の虎殺しの武松がいつの間にか影が薄くなって、黒旋風の李逵にバトンタッチしてるんですわ。
そのへんを北方は上手い手を思い付きました、裏金瓶梅とでも言うエピソードで武松を大人の男へ成長させ、さらに二人まとめて旅に出してしまうという荒技(笑)
おみごとです。

いや、お見事と言えば男達の殺し方だな……しみるよ、北方先生。
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