砕かれた街 上下(Small Town)
ローレンス ブロック(Lawrence Block) 田口俊樹訳 二見書房 '04


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ローレンスブロックと出会ったのは、約25年前。
「800万の死に様」(EIGHT MILLION WAY TO DIE '82)からです、あの時はやられましたねぇ、かなりはまり込んで、既刊を一つづつさかのぼって読んでいきました。
そして新刊を待つ楽しみも教えてもらいました、でもそれも「盲目の予言者」(Random Walk '98)まで、この時は、あらら何か違うじゃん……スティーブンキングかよ!ってことで、かなり久しぶりに読みました。
ニューヨーク生まれで、ニューヨークの事しか書かない彼は、あの9.11をどうとらえたのか気になったからです。
この小説はあの事件の事を直接書いているわけでは有りません、ただの発端です、犯人の心にうち込まれた大きな楔なのです。
そして、このお話の特徴は悪人が居ないと言う点でも有ります。
連続殺人事件は起こりますが、重要なのはそれを見聞きしただけの人でも、何らかのつながりを感じてしまい思わぬところで関係者になっていることです。
極論すれば、その事件で衝撃を受けて恐怖を感じた段階でその人はパズルの1ピースとして関わる当事者だということです。
連続殺人事件というこの巨大なパズルはその多くの当事者が連携する事で解決していきます。
そして当然に犯人も含めると9.11の当事者なのです。
悪意を持たないこの犯人像は、9.11の「アッラーアクバル」を連呼して居たアラブ人ともかぶりますよね、ただの忠誠心か信仰心からか判りませんが、NYに住む人達には何の恨みも無いわけですから、間違っているとは考えなかったのかという疑問には、そのどちらかが答えだと思います。
圧倒的に不利な戦いをするなら、正面切って戦わずゲリラ戦を挑むのが常套手段です、アラブ人は大都会というジャングルでテロという前線を作らないゲリラ戦を始めたんですね、
確かにこの選択は正しいでしょう、が実行したのはまちがいだというのが、ブロックのメッセージです。
つまり、この小説はあの9.11をブロックなりの方法で理解しようとした足跡なんだと思います。
ではこの私、アフガンの空爆はかなり懐かしい記憶になりつつ有る日本人としては。
9.11自体の発端は無視されて、その報復の方ばかりが嬉々として報道されるのにはちょっと参ったなぁと、考えていたのを思い出します。
発端のパレスチナ問題自体アメリカが深く関わっていたわけで。
あの9.11こそが報復だと見る事も出来ますよね。
実際テロリストと呼ばれる人たちは、後ろから自由の戦士として賞賛されてるわけですから、コレをどう見るかとしたら、自分の利益重視しか無いというのがアメリカのスタンス。
経済のために戦闘機を飛ばし、ブッシュの支持率と世論をナショナリズムで固めるため爆弾を落とす、そして今まで影響力の希薄だった第4位の産油国をひれ伏させる。
方法論的として有効です、が、実行したのは間違いだと私は考えますね、だれしも悪意を持つ事は有るでしょう、その感情から誰かに害意を持つ事も有ると思います、具体的な事を想像して計画する、しかしそこから先の事を実行するかしないかでは大きな違いが有ります。
噂では、アレ以前から空爆をするぞとブッシュはアフガンにプレッシャーっをかけていたと言う話も有ります。
また、アレが起きる可能性を示唆する情報を無視して大義名分が出来るのを待っていたと言う話も有ります。
真相はいつかわかるんでしょうか?
また、部外者のこんな私が当事者として真に理解できることは可能なんでしょうか?
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